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防災キャンプ連載コラム/自助力とは“生きる力”〜サバイバル視点で見る防災〜

「自助(じじょ)」という言葉、どこか難しそうな響きがありますよね。でも、もしそれをもっとシンプルに言い換えるとしたら、「生きる力」だと私は思っています。災害時に誰かの助けがすぐに届かないとき、自分の身を守り、家族を守り、生き延びるために何ができるか。それが“自助”であり、それはまさに“サバイバル”の力と重なります。


今回は、そんな「自助力=生きる力」を、キャンプやアウトドアという身近な体験を通してどう育てていけるのか、防災の視点からお話ししていきます。


「自助」は災害時の最前線

日本は自然災害が多い国です。地震、台風、大雨、豪雪。いつ、どこで、誰に降りかかってもおかしくない。そんな災害が起こったとき、人は3つの力に頼って命を守ります。


  1. 自助…自分自身の力

  2. 共助…地域や近隣の人との助け合い

  3. 公助…行政や公的機関からの支援


この中で、最も早く、そして最も確実に役立つのが「自助力」です。災害発生直後、行政や消防がすぐに駆けつけてくれるわけではありません。だからこそ、自分で判断し、動ける力が必要なのです。


サバイバル=生きるための知恵と技術

サバイバルというと、山奥でナイフ一本で生き延びるイメージを持つかもしれません。でも実は、サバイバルの本質はもっと日常的で現実的なものです。


  • 飲み水を確保する

  • 食料を調理する

  • 風雨をしのげる場所を作る

  • 火を起こして寒さを防ぐ

  • 危険から身を守る

  • 判断し、動く勇気を持つ


これらはすべて、災害時にも必要となるスキルです。つまり、サバイバルとは「不便な状況でも、命を守る行動ができる力」なのです。



キャンプは“自助力”の宝箱

ここで思い出してほしいのが、アウトドアやキャンプの体験です。テントを立てる、焚き火を起こす、水を運ぶ、ご飯を炊く。どれも、普段の便利な生活から少し離れた中で、人が本来持っている“生き抜く力”を再確認する体験です。


たとえば、子どもと一緒にテントを張る時。ポールの通し方やペグの打ち方に四苦八苦しながらも、やっと形になったときのあの達成感。焚き火の火起こしに何度も失敗して、やっとついた火に鍋をかけたときの嬉しさ。そんな経験の中には、「道具を使いこなす」「工夫する」「諦めずに挑戦する」といった、非常時に活きる“地力”が育まれています。


もしもに備える力=“想像力”と“経験値”

防災力を高めるうえで、もうひとつ大事な要素が「想像力」です。「もし今、停電になったら?」「水が止まったら?」「家から出られなくなったら?」そんな“もしも”をリアルに想像し、そのとき自分はどう動くかをシミュレーションすることが、災害への準備につながります。


キャンプはまさに、その“もしも”を疑似体験できる場でもあります。

・トイレが不便な環境でどう工夫するか

・夜間の照明が限られた中でどう動くか

・寒さや暑さをどうしのぐか

これらの経験がある人は、いざというとき「焦らず、動ける」ようになります。経験値の有無が、“生き延びる力”の差になるのです。


子どもから大人までにとって大切な体験

防災教育というと、つい「子どもに教えるもの」というイメージがあるかもしれません。でも実は、自助力を育てる体験は、すべての年代の人にとって必要なものです。

年齢を問わず、「体験に勝る学びはない」と言われるように、実際に自分の手で動き、失敗し、工夫して乗り越える経験は、“生きる力”を確実に育ててくれます。


たとえば、小学生がテント設営を手伝いながら自然とロープの結び方を覚えたり、中高生が火起こしに挑戦して「マッチ1本では簡単につかない」という現実に気づいたり。

大人であっても、便利な生活に慣れすぎて、いざというときに「何ができて、何ができないか」を体験してみることで、改めて見えてくることがあります。


「水が1日でこんなに必要なんだ」

「スマホの電源がなくなると、連絡手段が一気に絶たれる」

「トイレが使えないというのは、想像以上にストレスだ」


こうしたリアルな感覚は、実際に不便さを経験してこそ身につきます。そしてそれが、いざというときの判断力や行動力の差につながるのです。

キャンプやアウトドア体験は、子どもにとっては冒険であり、大人にとっては気づきの機会。そして家族や仲間と一緒に体験することで、共助の意識も自然と育まれていきます。

“生き抜く力”は、年齢を重ねたからといって自然に備わるものではありません。だからこそ、どの世代にも、あえて不便を楽しむ時間=“備える時間”が必要なのです。


“楽しい”からこそ続く防災

「防災=怖い、難しい」と思っている方も多いかもしれません。でも、アウトドアやキャンプを通して身につける防災力は、遊びの延長線上にあります。

「備えること」も、「生き延びるスキル」も、実は楽しい。ちょっとした工夫や知識で、「できるようになった!」という実感が得られる。そんなポジティブな防災こそ、これからの時代に求められる在り方だと思います。


最後に:自助力を“日常”に

自然の中での時間は、私たちが“生きる”ということをシンプルに教えてくれます。便利なものがなくても、自然と対話し、工夫しながら過ごす力。それが「自助力=生きる力」です。

そしてその力は、キャンプやアウトドアという日常の中で、無理なく、楽しく、育てていくことができます。いざというときに焦らず動ける自分でいるために。ぜひ、今週末は自然の中で、小さな“サバイバル”を体験してみませんか?

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